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2017年06月02日

2004年海洋開発論文集に掲載されました

2004年当時私はセーリング連盟の理事長として様々な公的機関から
ヒヤリングや、海の観光に対する会議に参加していました。以下の論文は
そんな時に書かせて頂いた文章です。

沖縄における海洋性レクリエーションの現状と展望

はじめに
沖縄県は大小160の島からなり,北緯26度,東経127度付近を中心として年間平均気温22度,年間降雨量2千ミリにもなる日本列島最南端の島嶼県です,人口約130万人およそ47万所帯になります.四方を海に恵まれ,海洋性レクリエーションの豊富な事はイメージとしても定着している所です.
改めて「レクリエーション」の意味を調べてみると,「仕事や勉強などの疲れを、休養や娯楽などによって精神的,肉体的に回復すること,そのために行う休養や娯楽」とあります.
私は与えられた海洋性レクリエーションのテーマとして娯楽的要素のスポーツや遊びの事について述べてみたいと思います.

1.海洋性レクリエーションの形態

 海洋性レクリエーションといっても海岸,海浜,洋上,海中と海のどの場面で遊ぶかによって様々なレクリエーションがあります.また個人的な趣味や余暇で行う形態と,ビーチ等で料金を支払って体験,参加する形態があります.その違いは使う器材や道具が個人的な要素を持っているか否かに係っていると思われます.
例えば,リゾートホテル等のビーチで多くの人が経験する「バナナボート」(バナナ型の細長いゴムボートに4〜6人が乗り,モーターボート等で引っ張ってもらう乗物)や「パラセール」(パラシュートを背負った椅子に1〜3人座りシートベルトをして,モーターボートで引っ張られながら空中を舞う乗物)等は体験型の代表的なレクリエーションです.
フィッシングやダイビング,サーフィン等は個人的趣味の形態の代表でしょう.

2.レクリエーションの種類と現状
 
これからは主に洋上と,海中の個人或いはグループとしてのレクリエーションついて注目してみたいと思います.
その代表的なものを幾つか挙げてみますと,フィッシング,ダイビング,ウィンドサーフィン,パーソナルウォータークラフト,カヤック,ヨッティング等があげられますが,その中で,磯釣りも含め愛好家の数では最も盛んなのは釣りと思われます。
洋上の釣りは,釣船で沖に出る沖釣りとトローリングと云われている船を移動させながら釣るタイプがあります.沖縄の梅雨明けの6月から7月にかけて近海では,いくつものスポーツフィッシング大会やビルフィシュトーナメントが全国規模で開催され,100キロ以上のカジキやマグロ,大型のシイラ,回遊魚を対象としたトローリグが行われています。このような大会に参加するため,関東関西から自らのボートを回航して参加する人達もいます.沖釣り大会も県内各地で年間を通じて盛んに開催されています.一日体験型も出てきました.

県民の多くの釣り愛好家は,週末に乗合やチャーターあるいは個人やグループで所有する釣船で沖合のポイントを目指し出港しています.
テレビドラマ「Drコトー診療所」のロケ地にもなり,台湾に近い日本最西端の与那国島は年間1千本以上のカジキが釣れる島ですが,ここでもカジキ釣り大会が行われ全国から大物狙いのアングラーが挑戦します.参加者の中には有名な釣り愛好家で別荘を与那国に建てた映画俳優も居るようです.
次に盛んなのは,おそらくスキューバダイビングやスキンダイビングではないでしょうか.沖縄の観光ともリンクし年間延べ45万人以上の人達が様々な形態のダイビングを,ここ沖縄で楽しんでいるようです.
スキューバダイビングは県民の愛好家と合わせると年間60〜70万本(空気ボンベの利用数)以上もの潜水が行われていると推測できます.
また沖縄にダイビングに来る人達の多くがリピーターで沖縄観光の重要な要素を占めています.
このような環境をつくっているのは,ダイビングショップが最もレンタル制度の充実している,レクリエーションだからではないでしょうか.
サーフィンやウィンドサーフィンも盛んで多くのショップが各地にあります.特にウィンドサーフィンにおいては、国内のプロ選手の大会なども開催されるほど沖縄の気象的条件がプロに相応しい条件を作っています.
サーフィンやウィンドサーフィンは、祖国復帰前のアメリカ文化の影響もあり,ここ沖縄が日本の発祥の地とも云われています.
最近は小型のサーフボードと大きなカイトを組み合わせカイトでサーフボードを引っ張る「カイトサーフィン」も出現し,良い風の吹く海面で盛んに成りつつあります.県外のカイトサーフィンショップも沖縄での体験者を募りツアーを組んで楽しみに来ます.

今,最も新しいサーフィンスタイルは,腹ばいになってお腹の下に水泳のビート板を大きくした様なボードを敷いて,足ヒレを着用しスピードをつけて波に乗る「ボディーボード」と云うサーフィンで特に女性に人気があるようです.

また,パーソナルウォータークラフトといわれる水上オートバイ或はジェットスキー(川崎重工の登録商標)と云われているエンジンのついた小型の水上の乗物も色々な形態が生まれてきています.タンデムという2人乗りや、更に大型の4人乗りや,数人乗りのスキーボートタイプも出てきました

ボート免許制度の改正もありこれらパーソナルウォータークラフトの普及は広がりつつあります.
このパーソナルウォータークラフトでスノーボード様なボードを引っ張りその上に乗ってウォータークラフトのつくる引き波の上をジャンプしたり,アクロバット的な動きを楽しむ「ウエィクボード」も人気が出てきました.一種の水上スキーです.
         
次に、エコツアー的要素もあり最近少しずつ愛好家が増えてきているのが,「カヤック」や「シーカヤック」です.細長い船体でパドルが柄の両側についていて,直進性が良く軽量でカートップでも運べます.
洋上の自然を直接感じることができ,海の自転車とも云われています.ウミガメやイルカ,クジラとも出会うチャンスがあります.
本島沿岸や周辺離島の沿岸,宮古八重山等のフィールドも開発されてきました.県内の専門店が県外からの愛好家を募り,沿岸をツーリングとかトレッキングと称し,キャンプをしながら一種のクルージングをしています.

もっとも遊ぶ人が少ないのがヨットです.
しかし,ヨットにとって素晴らしいセーリング環境(何時も風がある事)と自然環境を持っている沖縄は今後,経済の回復とともに愛好家も増えることでしょう.
ヨットもキャビンを持ちエンジンを備えている「セーリングクルーザー」とそれらの設備の無い「セーリングディンギー」と云うタイプがありますが,ディンギーは国体等の競技会に出場する競技関係者や団体が所有しているのがほとんどで個人がレクリエーションに使う事はほとんど無いのが実態です.それでも年間10回程度のヨットレースが行われ、隔年で台湾までの国際レースも開催されています。今年は県外から7艇のヨットが参加しました。
クルーザーは現在拡張工事中の宜野湾マリーナの完成や,各地で工事中のマリーナの完成によって確実に増加するものと思われます.
計画されている全てのマリーナが完成すると県内には少なくとも3千隻以上のヨット,ボートが収容できる事になります

3.気象/海象との関係について

 さて,これら,沖縄の海を利用するレクリエーションは大きく気象海象条件に左右されます.風がある程度強く吹くことが楽しく,その醍醐味を満喫できるウィンドサーフィンやヨット,穏やかな波の方が水面に近い視線を持つシーカヤックにとっては安全で楽しくゆったりと海を満喫できるのです.
ダイビングとて海岸からエントリーする場合などは,あまり波が無い方が安全です.
たとえボートでダイビングポイントまで行くにしても荒れている海では危険です.それぞれのレクリエーションに応じて気象条件が違いますが,台風の時には全ての海の遊びができなくなります.また,冬の北風の強い時にはほとんどの遊びができません.しかしキャリアブルなサーフィンやウィンドサーフィン等は島影で波の少ない海面や,湾内の適当な海面に移動する事で楽しむことも可能ですが,ヨットやボートはそうは行きません.
実は,この気象や海象が沖縄の海洋性レクリエーションの限界をつくっているのです.
例えば,リゾートホテルのカタマランヨット(双胴ヨット)で一般のお客様が楽しく洋上にサンセットクルーズに出られる海の条件はホテルの立地にもよりますが年間160〜180日程度と云われています.
ダイビングボート等で沖縄本島から近くの慶良間諸島まで行ける海象条件は良くて200日程度でしょう.地形的条件で宮古や石垣島ではもう少し多いと思われます.
釣りの中でもトローリングはさらに条件が悪くなります.波が無くても雨がひどいときは出港を取り止める事になります.ダイビングは可能でもシーカヤックは中止することでしょう.
このように気象条件や海象条件で大きく左右されることを承知の上で海と付き合うことが必要です.観光で来県したお客様には一層何らかの替わりのレクリエーションの選択肢を用意する必要があると思われます

4.事故と安全対策について

 次にこれら海洋性レクリエーションに付き物の事故について少し述べてみたいと思います.気温,水温ともに温暖な沖縄は海洋性レクリエーションにとって最適な環境を持っていることは周知のイメージです.しかし,干満によって生じるリーフの持つ危険性や複雑な海岸線とその周辺の潮流,特定な海岸での離岸流(リップカレント),オニヒトデや毒を持つイソギンチャクや貝そして台風とその影響で起きる波浪等々常に身近な海に危険が潜んでいることを十分知ったうえで楽しんでいただきたいのですが,残念なことに毎年事故による犠牲者が出ています.
座礁,漂流,転落、潜水中のパニック,器具取扱い不慣れ,気象の急変等々ありますが,原則はすべて自己責任です.たとえチャーターやレンタルの船や道具を使用していても洋上でのトラブルや故障,事故等についても原則的に自己の責任において海に出るべきものと思います.
自身の健康状態や自身のスキルレベル等良く自覚していなければなりません.
ダイビングやシュノーケリングでも年間10名前後の方が亡くなっているようです.
今年(平成16年)2月にはウィンドサーフィンの練習中に気象の急変により沖に流された仲間と救助に行った先輩の二人が漂流し,一人が亡くなりました.磯釣り時に大波にさらわれ落水死亡,スキンダイビング中にリップカレントによって沖に流され行方不明,数日後遺体で発見,ドリフトダイビング(潮の流れに任せてダイビングする事)中に予想以上に流され船に戻れなくなって漂流翌日発見等々,報告やニュースにならない事故はもっとあると思われます.
大切なことは,事故が発生したときの救助体制や緊急時に対応する知識や安全器具の使い方等を熟知することが重要です.同時に法定上の安全器具はもちろん自身の体に装着する安全器具などは体に合ったサイズを選ぶことはもちろん,自身の身の安全のために国内基準にとらわれず外国製でも一定の基準以上の道具を選ぶことも選択肢の一つではないでしょうか.

これらの海洋性レクリエーションの中には一定の施設を整備することが,普及や質の向上ひいては安全に役立つものもあります.例えばマリーナ等では,利用者に対する様々な安全思想の啓蒙活動や訓練の実施が集中して出来る事などが挙げられます.同時に愛好家団体等の組織化もしやすく,一定のマナーやルール造りも可能となります.互いの危機情報を共有することで安全にも立ちます.
ハードな施設をさほど必要としないものもあります.シーカヤックやウィンドサーフィン,小型のパーソナルウォータークラフト等々です.これらのレクリエーションは自家用車で,牽引やカートップで運び適当な海岸からエントリー出来るその手軽さが受けている面もあるからです.

しかし,その手軽さが安全に対する啓蒙活動やスキルアップの為の組織化や組織率を低くしています.そのことが間接的に事故の発生を生んでいる要素になっていると思われます。
もちろん各種別に組織的な団体があり所属している愛好家も多くいます.組織化すれば事故が無くなるわけではありませんが安全意識の向上になります,組織化やクラブ化が今後の課題と思います.

5.教育現場や普及活動について

様々な海洋性レクリエーションを楽しむ為の基本的な個人としての対応の基本は,年少時の学校での海や水に対する体験教育が重要と思われます.泳げなければ海の遊びが出来ないことはありませんが,重要な要素です.
最近は,一昔前の臨海学校や林間学校の様な水辺や野外活動等を通じ自然の中での行動の仕方や,ヨット部水泳部など海や水に関連する保健体育的教育現場が少なくなってきている様に感じられます.プールがあっても指導者が少ない,水泳の時間が少ない等々と聞こえてきます.
海は危険だから行かないように,泳ぐことは民間の水泳クラブで習う,この様な事が普通の時代ですが周りが海に囲まれている沖縄なのですから積極的に海の楽しさと危険に対する知識や事故に対する対処方法を教育することが,全ての海洋性レクリエーションを安全に楽しむ基本と思います.ボーイスカウトやガールスカウトの様な活動は自然に対する接し方の基本を教えてくれる団体で,もっと広がっても良いのではないかと感じています.

6.展望と提案

 これからの発展のためには多くの海洋性レクリエーションの情報発信や体験教室,スクール,ショップが集中する海に面した公共的施設が望まれます.とくに観光や修学旅行などで来県された人達が上記の様なレクリエーションを楽しもうとしても,どうすれば良いのか,何処に行けば良いのか分からない事があります.そこで,「マリンレクリエーション総合サービスセンター」的施設を造り,そこに来る事で,予備知識や安全教育,何を選択して遊ぶか,何時から出来るのか等々も含め沖縄の海洋文化や独特の道具や器具なども展示紹介した「マリタイムミュージアム」的機能も併せ持つことで沖縄の海をもっと楽しんで戴けるのではないでしょうか.
更にこれまで述べた色々な遊びに慣れたベテランや,アドベンチャー的体験をしてみたい人達に対する場合の対応と其の為の情報の発信をどうするのか,
道具や船をチャーターしたい,専門のガイドが欲しい等々に応じられる事が今後の発展に大きく寄与する事になり,質の向上にも役立つ事と思います.
このようなベテランがそれぞれのレクリエーションの分野でのオピニオンであり指導者であり,情報発信者なのです.
また,今後完成するマリーナには積極的に県外,外国からの係留保管艇を誘致し,沖縄の海洋性レクリエーションの象徴的施設とする事と併せて,地中海やカリブ海の様にリゾートで海のレクリエーションを幅広く奥深く楽しめる,豊富なレンタルグッズ,チャーター出来るヨット,ボートそしてこれらに関わる人材やガイド,経験豊かなインストラクター更に官民のレスキューシステムの充実が大きく発展させる事になるでしょう.

これまでも紹介したように県外のそれぞれの分野のプロショップが,県内のプロショップ等と提携し多くのマリンスポーツ愛好家を沖縄に呼んで楽しんでいるのです.
この世界では今「いつか南へ」と云うような流れがあるように感じます.
加えて,私はこのような沖縄の海洋性レクリエーションを安全に楽しく過ごして戴くために沖縄独自の資格制度を提案したいと考えています.
それは,沖縄の海の歴史やボート免許を始めとする海に関する様々な公的私的資格や,海中生物に関する知識,気象海象知識,釣り,ダイビング,セーリング,サーフィングの技術,救急救命技能等々,海で必要な各種の知識技能を総合的に身に付けた人達をそのレベル別に沖縄県が資格を認定し社会的なステイタスを与える事です.
名称を「オキナワマリンマイスター」と呼びこの資格所有者が従事しているリゾートホテルやマリーナ,各種ショップ等の情報を公開する事で一つの大きな信用になります.特に不特定多数の人達が利用する施設等では,この資格者の雇用を義務化してはいかがでしょうか.
オーストラリアの「ライフガード」の様な社会的な認知とステイタスが得られれば尚のこと素晴らしいことと思います.定着するときっと全国から資格取得に来県することでしょう.「ライフガード」資格の取得のためにオーストラリアに行くように.
  沖縄のこのような多種多様な海洋性レクリエーション発展の可能性は気象海象の制限はありますが日本一の自然環境にあることは間違いないと信じています.

               以上



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Posted by 鉄瓶・錆び鉄 at 14:20│Comments(0)私のTUBUYAKI
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